みなさんは、なにかを「学ぶ」とき、どんな行動をとりますか?

 

 参考書を買って知識を取り入れる、アプリで発音の練習をする、Youtubeでプロの動画を見る、習い事をする…など、現代は多くの学習手段がありますね。

 

 しかし、いつの時代でも変わらない「学習」の本質をご存じでしょうか?答えはとってもシンプル。「真似」です。そして、これは大人だけでなく、生まれたばかりの子どもたちにとって非常に大切な習慣なのです。

 

「マネして学ぶ」は人間の体に備わった機能

 

 【ミラーニューロン】という言葉をご存じでしょうか。これは二十数年前に解明されたヒトに備わる脳機能の一つで、「他人がとった行動が、あたかも自分がとった行動かのように体が反応する」というもので、別名「ものまね細胞」とも呼ばれています。

 

 例えば、赤ちゃんには「言葉を話す」ことや、「感情を理解する」ことはできません。ですが、日々大人たちの行動や表情を見ながら育つうちに、少しずつ言葉が話せるようになったり、相手の感情を理解したりすることができるようになりますよね。

 

 「学ぶ」の語源が「真似ぶ(まねをする)」であるように、「マネ」とは学習に大切なもの、いや、学習そのものと言えます。

 

おままごとは「真似=学び」の宝庫!

 

「もうすぐできますよ~!」「ふ~ふ~しましょ!」

 

 わが子がおままごとのときに言うセリフは、お母さんである私の日常的な発言がそのまま反映されています。おままごとに限ったことではありませんが、日常的に目にする他人の行動を思い起こしながら遊ぶおままごとは、まさに「真似=学び」の宝庫です。

 

 周りの大人たちのように行動することは、子どもにとっては想像以上にワクワク・ドキドキするとてもエキサイティングな時間です。みなさんが子供の頃、お母さんがやお父さんがすることを、自分も真似してみたり、調理道具などを自分で使うときにドキドキしませんでしたか?きっと、お子さんも、そんなドキドキを感じながら、真似をしたり、遊んだりしているはずです。

 お子さんと一緒に遊ぶ際は、自分も子供の頃に戻った感覚で一緒に過ごすと、お子さんがどんなことにドキドキしながら過ごしているかが、よく見えてくるかもしれません。

 

真似は動作だけでなく、感情の豊かさを育てます

 

 「ありがとう!」「美味しい!」など、感情が反映された言動や行動は、子どもたちの情緒を育むうえで大切な要素です。「こういう時は嬉しいんだ!」「こういうことをすると、悲しかったり、イやな気持ちになるんだな」と、たとえ本人が無意識でも、大人の感情の変化を子どもたちはしっかり観察し、そして自分に投影しながら、様々な感情を学んでいきます。

 

 特に、自分がしたことで「誰かに喜んでもらえる」という経験は、老若男女問わずとっても嬉しい瞬間だと思います。おままごとは真似を通して多くの学びを習得できる時間ですので、ぜひお子さんに「誰かのために行動する」喜びを実感させてあげてください。

 

 料理のおままごとの時なら、ご飯やスープをよそってもらったときに「ありがとう!美味しそうだね!」「いただきます!」という、ごく自然な会話でも十分お子さんには喜びが伝わると思います。そんな時、心は幸福感に満たされ、穏やかな心が育まれ、おままごとの中だけでなく、実際の生活でも大らかな気持ちで過ごすことができると思います。

 

想像しながら真似る行為は、やがて創造する力になる

 

 昨今、よく子どもたちには≪創造する力≫が大事といわれることが多いように思えます。

 

 ですが、冒頭でご紹介したミラーニューロンのように、これはもともと子どもたちに十分備わっている能力なので、大人が一から十まで準備をしなくても、自然と育まれるものなのです。

 

 遊びの中で、そして日常生活の中で、「今この子はどんなことを見て、どんなことを思っているんだろう?」「あのお鍋をかき混ぜながら、あの子の目にはどんな料理が映っているんだろう?」「そもそも、料理じゃないのかも?」と、お子さんが頭の中でどんな世界を繰り広げているかを考えながら、観察してみてください。

 

 大人にとっても、想像する時間はワクワク・ドキドキがあふれていて、今まで気づかなかったお子さんの感性が見つかるかもしれませんよ!

 

今安 志保 Shiho Imayasu

ピアニスト/脚本/ラジオパーソナリティ
脳科学的根拠と⼼理学的根拠を得意の⾳楽学で紐解き、38 年1万5千組以上の親⼦に対 して“笑顔の解決”を促してきた実績より、“⾚ちゃんの笑顔ソムリエ”の称号を授与される。⾮認知能⼒を育む『啓育』の実践者として、胎児から始まる乳幼児教育の第⼀⼈者。