「子どもは褒めて伸ばしましょう!」
誰でも一度は聞いたことがあるかもしれませんが、闇雲に褒めることは、時に逆効果になってしまうことがあります。
本当に大切なことは「ママとパパは、いつでも自分を見守ってくれているんだ」と、子どもが安心できること。
本記事では、褒め過ぎることの落とし穴と、それを回避する案についてお話させて頂きます。
私たちは、なぜ子どもを「褒める」のでしょう?
子どもの成長は、とにかく嬉しいものですよね。寝返りを打ったり、よちよち歩きをしたり、ある日ついに掴まり立ちが出来るようになったり…。
当の本人よりも、ママやパパの方が喜びに溢れ「すごいすごい~!上手だね~!」と、思わず大声をあげてしまうものです。そして、そんな大人たちの様子を見て、子どもは更に嬉しくなり、次々に新しいことにチャレンジしていきます。
このように「褒めて伸ばす」とは、純粋な喜びの表現はもちろんのこと、褒めることを通して子どもの自発的な意欲を促すことが目的とされています。
実際に子どもたちも、褒められるほど嬉しくなってどんどん行動するようになりますが、ここにある“落とし穴”があるのです。
「褒める」の背後にある「こうなってほしい」という思惑
ここで、少しだけ考えてみましょう。
そもそも子どもたちは、ママやパパが望んだり、何か与えたりするから成長するのでしょうか?
私は、そうではないと思います。
子どもは、誰に言われるでもなく自ら新しいことにチャレンジすることで経験を積み重ねていくものであり、だからこそ「嬉しい」「褒めてあげたい」という感情に繋がります。
しかし、いつだって純粋でいられる大人はあまり多くありません。
「お手伝いをする子はかしこいね!」「ちゃんと成功できて偉いね!」
のように、大人の都合に合わせた行動や、物事に成功した時にだけ褒めるようになると、本来の素直な感情表現として行なっていた「褒める」から、いつの間にか、特定の価値観に基づいた「評価」の押し付けが目的にすり替わってしまいます。
加えて、成長に伴い子どもには「自我」が芽生えます。
一般的に4歳を過ぎた頃には、子どもなりの「納得する出来栄え」といった価値観が徐々に形成されるのです。
今までのように「上手だね~」と褒めたところで、「こんなの上手じゃない!」と怒り出したり、逆に、褒められないことは「失敗したら褒めてもらえない…」「褒めてもらえないことは、やらない方がいいんだ…」と認識し、チャレンジに対して消極的になってしまうことがあります。
たとえ純粋に褒めているつもりでも、その背景には少なからず「こうなってほしい」という思惑が隠れていたり、子供たちの成長に伴って、従来とは異なる方向に向かってしまうことも起きかねないのです。
落とし穴を回避するには、素直に「事実」を伝えてみる
「褒める」が万能ではないとなると、一体なんと声をかけたらいいのでしょうか?
そこで、私がおススメするのは、シンプルに「事実」を伝えることです。
「ひとりでできたね!」
「最後までがんばれたね!」
そんな、だれが見ても同じ「事実」を伝えてみてください。
褒めることに比べて、どこか頼りなくインパクトに欠けるように思えるかもしれません。
しかし、子どもが本当に必要としていることは、単に褒めてもらうことではなく「ママやパパに見守っていてもらうこと」なのではないでしょうか。
上手くいった時も、そして失敗してしまった時も、どんな時も変わらずそばで見守ってくれているママやパパは「いつでも自分の味方なんだ!」と安心できるからこそ、子どもはもっと頑張れるし、もっとチャレンジできるのです。
「褒める」こと自体はとても大切なことです。
しかしその便利さ故に、知らず知らずのうちに足を捕られてしまう危険も孕んでいます。
「すごいね!」「かしこいね!」「上手にできたね!」
時々、意識して「褒める」言葉はちょっとだけ胸にしまっておいてみてください。
その代わりに、子どもが何を感じ、何に夢中になっているかを、子供の目線に立って観察し、シンプルに想いを共有してみると…子育てはもっと楽しく、もっと豊かになるかもしれません。

ライター:村上三保子
2歳からのこども料理教室「こどもカフェ」主宰「上手につくる」ことより「楽しくつくる」をコンセプトに、7,000人以上のママやパパに料理を通して子育ての楽しさ、子どもが自立する子育て法を伝え、教室のリピート率は9割を超えている。幼稚園、保育園など講演多数。「おはよう朝日です」(朝日放送テレビ)などのメディア出演もあり。2020年10月初著書「ようこそ!子育てキッチンへ」出版