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しみずみえ

子どもは大人の思い通りに遊ばない – しみずみえ

こんにちは。あそびの専門家しみずみえです。

前回は「遊びとは、たとえ目的がなくてもわくわくするもの」というテーマでコラムを書かせていただきました。カーテン、砂、葉っぱ、木や花びらなど、日常に存在するあらゆるものが、とりわけ小さな子どもにとってのわくわくであり、その好奇心こそが、本当の意味での「学び」につながるのでは、というお話でした。

そんな「いい遊び」のテーマに続き、今回は「いいおもちゃ」について考えてみたいと思います。

そのおもちゃ、本当に子どものためになっている?

突然ですが、「いいおもちゃ」と聞いてどんなものを思い浮かべますか?

木などの天然素材、北欧の有名ブランド、〇〇式や〇〇教育など、専門的な教育カリキュラムに基づくもの…と、一人一人違った形の「いいおもちゃ」があるかもしれませんね。

ですが、私にとってのいいおもちゃとはもっとシンプルで「子どもが遊び方を決められるおもちゃ」。作り手の計算通りに遊ぶのではなく、遊び手である子どもたちが、それぞれのスタイルで遊び方を模索し、それぞれのセンスでわくわくできるおもちゃです。

昨今、子どもの知能向上を目的とした「知育玩具」が広く普及しています。多様なおもちゃを楽しめること自体は喜ばしい一方で、「正しく遊ばせなければならない」「頭をよくしなくちゃならない」と、いつしか本来の遊びから遠ざかり、大人たちの目的や義務感ばかりが先行してしまうおもちゃも少なくありません。

子どもたちは、そんなおもちゃを心から楽しんで遊ぶことができるでしょうか。無意識に、子どものためではなく、自分たちのためのおもちゃになっていないでしょうか。

必ずしも「大人の思い通り」にはならない子どもの遊び

私の思う「いいおもちゃ」の例として、ウッディプッディの『RING10(リングテン)』があります。

これはドーナツのような木製リングと、輪投げの棒のような土台がセットになったおもちゃです。そのほかにも、専用の紐、サイコロ、顔や帽子のパーツなど、細かなおもちゃもセットになっています。

パーツの組み合わせと発想次第では実に様々な遊びかたが楽しめるRING10。自由度が高いゆえ、遊び方の参考にできる写真付きの説明書も同梱されています。

しかし、これはあくまで私の予想に過ぎませんが、おそらく子どもたちは説明書通りの遊び方だけでなく、個々にオリジナルの楽しみ方を見つけるのではないかなと思っています。

例えば、箱から出した途端に床にザザーッとばらまき、その勢いのある音や動きを楽しむ子ども。自分のお気に入りのカバンに入れて、得意げになっておでかけを楽しむ子ども、食べ物に見立て、料理や食事ごっこを楽しむ子どもなどなど…。

「RING10」もまた知育的な意図があって作られる「知育玩具」として販売されています。なので、自由な遊び方に興じる子どもたちを見ると、「こうやって遊ぶのよ」と教えたくなったり「ちゃんと遊ぼうね」と注意したくなる時があるかもしれません。

でも、大丈夫です。だって自分で遊び方を決められるおもちゃって、「創造性」、「発想力」、「好奇心」その他諸々・・・・・子どもたちに身に付けて欲しいと思う様々なチカラが、充分に育まれていると思いませんか?

たとえ大人の思い通りの遊び方にならずとも、「いいおもちゃ=子どもが自ら遊びを作り出せるおもちゃ」には、自然と子どもたちを育む要素がたくさん詰まっているのです。

「目的にそった知育効果が得られないのでは?」と不安を感じるときは…

といっても、せっかく知育的な目的を持っておもちゃを選んでいるから、それもしっかり身に付けて欲しいんだよね、と思うこともあるかもしれません。

そんなときは「これが正しい遊び方なの!」と焦るのではなく、「お母さん/お父さんも一緒に遊んでみていい?」と声をかけながら、保護者の方自ら楽しそうに遊んでみてください。

数えながら棒に入れるとか。リングの穴にひもを通すとか。とにかく「楽しそうに遊ぶ」ことが大切です。すると、「パパやママが楽しそう!」「そんな遊び方もできるんだ、面白そうだな!」と自然と子どもたちも真似を始めるでしょう。

子どもたち自身が遊びを決められる、ということは、子どもたちが自分で考えて遊び、自分なりの楽しさを見つけること。そんな子どもたちを、優しく見守り、そして応援してあげましょう。

遊びを通して、子どもたちが、受け身ではなく、主体的に自分の時間を過ごせるような、そんなおもちゃに出会えたらいいですね。

ライター:しみずみえ

こどもの育ちとあそびの専門家。 玩具メーカーでの企画開発、KCJ GROUP 株式会社での『キッザニア東京』の創業、こども向け体験講座の企画運営、保育園の立ち上げ支援などに携わる。 現在は、あそびを通して、おとな・こどもが共に自分らしさを育むことを目指し、こどものための遊びプログラムの提供、およびどもに関わる大人のための講座や研修を行う。

【関連サイト】 こども×おとな×しごとプロジェクト
https://kocp.net/

【書籍】『あそびのじかん―こどもの世界が広がる遊びとおとなの関わり方(英治出版)』https://www.amazon.co.jp/dp/4862762174/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_S03Z6ZBCF3M0JT4C8DG3

子どもの学びは「わくわく」から生まれる – しみずみえ

こんにちは!

あそびの専門家、しみずみえです。

前回は「あそびはこどもを賢くするためのもの?〈記事を読む〉」と題して、あそびってもっと肩の力を抜いて、のびのびと楽しんでもいいよね、といったコラムを書かせていただきました。そして2回目となる今回は、その「あそび」そのものについて考えてみたいと思います!

目的よりも大切な「わくわく」する気持ち

さて、ここで一つ質問があります。みなさんは「あそび」と聞いて、どんなことをイメージしますか?

ブロックで何かを作る、おもちゃを使ってままごとをする、ブランコに乗る、あるいはテレビゲームに夢中になる・・・。世代や性別など、人によって様々なイメージを思い浮かべるかもしれませんね。

しかし、小さな子どもたちにとっては、必ずしも目を引く楽しいおもちゃだけが楽しいあそびとは限りません。

たとえば、0歳の赤ちゃんが、カーテンが風で揺れる様子をじーっと眺めていたり、1歳児が、大人のスマホや、メガネや、コップを、1つずつ持ってきて、何度も繰り返し「どーぞ!」と手渡したり、2歳児が、部屋の端から端まで何度も「よーいどん!」と走り続けたり、道路の模様に合わせてはみ出さないよう慎重に歩いたり、買い物に行ってスーパーのカゴを持ちたがったり・・・。

小さな子どもが楽しむあそびって、大人目線では「何が面白いんだろう?」と思ってしまうようなことばかりですよね。

しかし本人たちにとっては、見慣れないカーテンの動きやそこから漏れるキレイな光、ものを手渡すと「ありがとう!」と受け取ってくれる大人たちの反応、全力で走る気持ちよさ、歩ける場所が限られるドキドキ感、大人のように買い物をする緊張感と嬉しさ・・・。

そのどれもが、わくわくに満ちた時間なのです。みなさんの幼少時代を振り返ってみて、そのような記憶や思い出はありませんでしょうか?

私は、あそびとは「目的がなくてもわくわくすること」だと考えています。子どもが「面白そう!」とわくわくして、主体的に行動すれば、それは立派なあそびです。そして子どもたちはあそびを通して、周囲の様々な人やものに触れ合い、世界が広がっていきます。

「わくわく」は日常生活にあふれている

そんな子どもたちのために、私たち大人ができることはなんだろう・・・。

なんて、ムズカしく考える必要はありません。子どもがわくわくしそうなきっかけを与えてみたり、それを見守るだけでも十分です。

例えば、0歳児におすすめのあそびは、触れて話しかけることです。「たーちゃんの、ほっぺたー!」とか、「ちっちゃい、おててー!」とか、触れているものをそのまま言葉にするだけでOK。

家族の手から始め、ガーゼのハンカチ、ふわふわのタオル、木のおもちゃの丸いところなど、家にあるもので触り心地の良さそうなものを見つけたら、そっと、触らせてあげてください。お父さんお母さんと一緒に一つ一つ触ると、安心感とともに新しい出会いを楽しめます。

1歳や2歳頃になると、行動範囲の拡大に伴い、触れたがるものも多々増えてきます。砂や泥、水、葉っぱや木の枝、花びらの多い花や少ない花、粘土、やわらかい紙や硬い紙、毛糸や布、つるつるしたリボン・・・。

触ったり、並べたり、くしゃくしゃにしたり、混ぜたり、何かに見立てたり・・・。

先ほども書いたように、一見退屈そうなあそびでも、子どもは自分なりに試行錯誤したり、想像をめぐらしながら楽しんでいます。ですので、集中して楽しんでいるときは、近くで優しく見守ってあげましょう。

計算や読み書きよりも大切な「学び」

もう少し大きくなると、もはや生活のあらゆる場面が何でもあそびになります。

一緒に買い物に行けば、知らなかった野菜や食材に出会います。大きい・小さい・多い・少ないという感覚も身につきます。お茶を注ぐうちに手のチカラがコントロールできるようになります。イチゴを家族に配るうちに、今日は1人3個ずつだね、なんてことが理屈抜きで実感できるようになります。

大人の真似っこが好きな子どもが多いのは、大人みたいにもっと色々なことができるようになりたい、と思う気持ちの表れだと思うのです。その気持ちを受け止めて、できることを1つずつ増やしていく。

すると、そのあそびはやがて「学び」となって、子どもたちの中に蓄積します。

あそびが学びにつながると言うと、計算や読み書きなどの教科学習的なものをイメージするかもしれません。ですが、遊びを通して得られる学びとは、単純に数値化や可視化できる知識ではなく、新しいものに興味を持ったり、自分でできるようになりたいという好奇心、いわば「学びの土台」のようなものを指します。

日常生活の中で、子どもたちは「あそび」として様々なわくわくするものと出会い、成長するにしたがって、その経験が「学び」となって現れます。

ですので、お父さん、お母さん、または子どもの周囲にいる大人たちには、「発達のためのあそび」にこだわるのではなく、もっと安心して、肩の力を抜いて、子どもたちの遊びを楽しく見守って頂きたいなぁと思っています。

さて、少し長くなりましたが、ここまでとさせていただきます。

今回は主に小さな子が行う日常のシンプルな動作に基づいたあそびをご紹介しましたが、次回はおもちゃを使ったあそびについてお伝えしたいと思います。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

しみずみえ

こどもの育ちとあそびの専門家。 玩具メーカーでの企画開発、KCJ GROUP 株式会社での『キッザニア東京』の創業、こども向け体験講座の企画運営、保育園の立ち上げ支援などに携わる。 現在は、あそびを通して、おとな・こどもが共に自分らしさを育むことを目指し、こどものための遊びプログラムの提供、およびどもに関わる大人のための講座や研修を行う。

【関連サイト】 こども×おとな×しごとプロジェクト
https://kocp.net/

【書籍】『あそびのじかん―こどもの世界が広がる遊びとおとなの関わり方(英治出版)』https://www.amazon.co.jp/dp/4862762174/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_S03Z6ZBCF3M0JT4C8DG3

遊びは子どもを賢くするためのもの? − しみずみえ

はじめまして。

“あそびの専門家” しみずみえです。

 

今月からこちらでコラムを書くことになりました!よろしくお願いいたします。「あそびの専門家」という聞きなれない肩書きの私が何をしているのか、まずは自己紹介しますね。

 

私は「あそび」という切り口で、大人たちに子どもとの向き合い方を、お伝えしています。お母さん/お父さんに向けては、親子で一緒に遊ぶワークショップや、遊びを理解するための講座を行っています。保育士さんや、子ども向け施設のスタッフ向けに研修を行うこともあります。また、ミュージアムのような施設での学び企画や、企業の仕事体験プログラムを考える、という「あそび」を広い意味でとらえた仕事もあります。

 

「あそびの専門家」を名乗るまでには、おもちゃの企画開発、キッザニア東京の創業、保育園の立上げや活動支援などの仕事をしてきました。様々な切り口で子どもたちに関わるうちに、子どもたちの豊かな成長のために大切なことは「あそび」の中にあると考えるようになり、今に至ります。

 

ところで、ここ数年、世の中の「あそび」に対する意識が変わってきたのですが、お気づきでしょうか? 「あそび」に価値があると考える人が増えています。「よく遊ぶと賢くなるってホントですか?」と、質問を頂くようになりました。

 

ちょっと前までは、「あそび」は「勉強」の対義語のように使われていました。「遊んでばっかりいないで、勉強しなさーい!」って言ったり言われたりした人もいるかもしれません。その頃に比べて、あそびが認められるようになり、これは良いことでしょうか。

 

実は私は、ちょっと心配しているのです。

 

遊びは学びで、よく遊ぶ子どもは賢くなる、と言われるようになりました。そうすると大人はどうするでしょうか。

 

「賢くなるために、ちゃんと正しく遊ばせなくちゃ!」・・・

 

笑い話のようですが、こういう大人が、実際に増えているのです。「子どもの能力を高めるための遊び」という本が書店に並ぶようになりました。脳が育つとか、発達を促すとか、効能書きの多いおもちゃが増えました。

 

遊んでばっかりしないで勉強しなさい、と言われていた時代のあそびは、全面的に認められた訳ではないけれど、それでも、子どもの領分として、主導権は子どもにありました。でも今、子どもを賢くさせることを目的に大人が遊びの主導権を持ち、子どもを導こうとしています。

 

確かに、子どもたちはあそびを通して、考えることや工夫することを楽しみ、失敗してもやり直せることや他の人と協力することを経験し、身体や手先を使うことを練習して・・・本当に沢山のことを学んでいます。でも、子どもたちは、「自分の発達を促すために遊ぼう!」とは思っていません。楽しくて遊びたいから、夢中になって遊んでいると、結果として、学びが後からついてくるのです。

 

だから、大人の人たちには、「あそび」のチカラをもっと信じていいよ、とお伝えしたいと思っています。何か学ばせようと目的を持たなくても、楽しく遊べば、ちゃんと学びが得られるから、そんなに頑張らなくても大丈夫だよ、って。

 

あそびは、決して難しいことでも、特別なことでもありません。身の回りのちょっとしたことに興味や疑問を抱いたり、面白がったりする気持ちから生まれた「普段着のあそび」こそが大切なのです。だから、もっと肩のチカラを抜いて、安心して、そして、大人自身も遊びを楽しんでみませんか。

 

次回からは、身の周りのことを使って、どんな風に遊ぶことができるのか、また、そのあそびが、どんな風に子どもの学びにつながるのか、ということを、具体的にお伝えしていきます。

 

どうぞ楽しみにお待ちください。

 

 

ライター:しみずみえ

こどもの育ちとあそびの専門家。
玩具メーカーでの企画開発、KCJ GROUP 株式会社でのキッザニア東京の創業、こども向け体験講座の企画運営、保育園の立ち上げ支援などに携わる。
現在は、あそびを通して、おとな・こどもが共に自分らしさを育むことを目指し、こどものための遊びプログラムの提供 及び こどもに関わる大人のための講座や研修を行う。

【関連サイト】
こども×おとな×しごとプロジェクト

https://kocp.net/

【書籍】『あそびのじかん―こどもの世界が広がる遊びとおとなの関わり方(英治出版)』https://www.amazon.co.jp/dp/4862762174/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_S03Z6ZBCF3M0JT4C8DG3