2018年にある教育研究機関が小学生を持つ親に対して《自分の子供はどんな風に育ってほしい?》と調査したところ、50%以上の親が「思いやりのある子」と回答しました。次いで、「周りから好かれる子」「友達の多い子」など、全体的に良好な交友関係を築ける人間性が過半数を占めています。

 このように、昨今は他者とのコミュニケーションが重視される傾向があります。「他者」と言っても、コミュニケーションが始まるのは幼稚園や保育園ではありません。お父さん、お母さん、祖父母、兄弟姉妹など、生まれてから外に出るまで接する家族との時間が、その子どものコミュニケーション能力の基礎を築くと言っても過言ではありません。

 そんな親子のコミュニケーションに言及する様々な本や意見は世間に多々ありますが、今回私がみなさんにお伝えしたいのは、このたった1つだけのことです。

 それは「赤ちゃん言葉や言い間違えをすぐ訂正・否定しないであげてほしい」ということです。

 例えば、お子さんが人参のことを『ニンニン』、とうもろこしを『とうもころし』と言い間違えたときに、

「ニンニンじゃないよ、ニンジンだよ」

「とうもころしじゃなくて、とうもろこしでしょ!」

と、すぐに訂正することが多々あるかと思います。

 「正しく言葉を使えるようになってほしい」「将来この子が言い間違えて恥をかくかもしれない」そんな心配が頭をよぎる気持ちはとてもよく分かります(何を隠そう、上の2つは実際に私が自分の子どもに言ったセリフそのものだからです)。

 しかし、どうかその気持ちをぐっと堪えて、すぐさま否定することをちょっとだけ我慢してください。

 なぜなら、子どもにとって大好きでかけがえのないパパとママとのコミュニケーションは、私たち大人が思う以上に大切な時間なのです。そこで、頑張って覚えた言葉や表現を「それは違う!」「こう言いなさい」と、つど訂正されることによって、楽しい時間は一転、間違えたら怒られる、苦痛の時間となってしまうからです。

 しかし、いつまでも間違えたままというわけにも行きません。そんな時は、訂正や否定の代わりに、正しい表現で返答してあげましょう。先程の例の場合であれば、

「ニンジン、おいしそうだね〜!」

「ママ(パパ)にも、とうもろこしちょうだい!」

 こんな感じで全然OK!親との会話の楽しさが損なわれない上、その時間の中で徐々に正しい表現を身につけることができます。

「お話しするって楽しいな!」

『もっとお話ししたいな!」

 「コミュニケーション能力」なんて堅苦しい表現では難しく聞こえてしまうものの、詰まるところ子ども自身が他者との関わりを「楽しむ」ことが、冒頭で書いた「思いやりの心」を育てるなによりものエッセンスになります。

 そして、そのためには私たち大人にとっても子供との会話を楽しむ気持ちが欠かせません。先程あげた例の通り、私も自身の経験を振り返って「もっとこうすればよかったな」と思うことが多々あります。

 きっとこれを読んでくださる方は、言われるまでもなくお子さんとの日々を楽しく過ごせていらっしゃると思いますが、時々「言い方をすぐに否定していないかな」と意識していただけたら、嬉しいです。

ライター:藤野ゆか

2006年から7年間ベビーマッサージ資格スクールを運営、2013年からは抱っこセミナー、ママ起業セミナー、SNS活用セミナーなど全国で開催。
2017年から『抱っこ育児コミュニケーター講座』を開講し、抱っこ育児を伝える講師を育成中。また2020年より『スマホひとつで動画編集講座』を開講、毎回満席となっている。